自家採取

自家採取のススメ【種の交換会編】

 長野県有機農業研究会主催第44回大会に出席しました。種の交換がメインですが、自家採取のセミナーという事で日本有機農業研究会種苗部長をされている千葉県倉敷市で「林農園」を営んでいる林重孝さんの講演会も同時に行われました。林さんは自家採取歴40年の大ベテランです。2.4㌶に約80品目150種類の野菜や小麦、大豆、小豆を作っているそうで、毎年60品目は自家採取するそうです。自分も自家採取は毎年行っていて、採種歴は3年の駆け出しです。主要農産物の米、大豆、その他にナス科、アブラナ科を自家採取しています。種取りは品目により難易度があり、一番やさしい物は「栄養繁殖」と言われる種子で、種を食用とする。米、麦、豆が該当します。

日本の食糧自給率と種の自給率

 近年、食料自給率が問題視されています。カロリーベースで平成30年から令和4年まで37%~38%と低水準のままです。少し先の令和12年は45%を目標に掲げていますが、農家の高齢化、後継者不足の影響もあり難しいと言えるでしょう。これは日本国民が食の重要性を軽視しているからだと言わざるを得ません。デンマークでの農業は高学歴エリートがライセンス制で就農し、農業を重要視していることが分かります。話が少しズレてしまいましたが、国内の種の自給率はどうなのでしょうか?農林水産省に問い合わせしたところ、主要農作物(稲、麦類、大豆類)果樹及びイモ類の種苗については、ほぼ100%国内生産・供給、野菜の種子については、統計的な情報を有していないので正確な数値は答えられないが、外国産が約9割なのだそうです。理由として良質な種子を安定的に供給するために、適地・適作とリスク分散の観点から、日本の種苗会社が、北、南半球の複数国で生産しているとの事です。伝統野菜の種子ですら輸入品であるという事ですから驚きです。リスク分散と言っても国内が1割では、もし輸入がストップしてしまった場合、食糧難になってしまう事は目に見えています。因みに自分で自家採取した種は有事の際はすぐに持ち出せる状態にしてあります。種子はそれほど重要なのです。

自家採取は難しい?

 「自家採取」と聞いてみなさんはどのような印象をお持ちですか?自分は品質に重点を置けばむずかしいと考えています。発芽率や種子寿命を考慮し、高品質な種を採取しなければなりません。販売するとなるとなおさらです。しかし「自家用」や「種の交換」を前提にすれば気軽にはじめられますね。

種取りの実際と難易度

 林さんのセミナーで確認できたことは、作物によって自家採取の難易度が変わるという事です。やさしい順に「栄養繁殖」の米、麦、大豆、小豆、落下生などです。つづいて「完熟果菜」トマト、カボチャ、スイカ、メロンなど、これらの作物はひと手間必要で、熟した実をつぶし、発酵させてから種を洗い乾燥させて保存します。良い点もあり、食べてから種取りするので美味い物を選ぶことができます。「未熟果菜」 キュウリなど、採種の仕方は緑色から黄色に変色し、少ししおれるまで置き収穫します。さらに1週間追い熟させてトマトと同じく種を取出し、発酵させてから種を洗い乾燥させ保存します。下の写真は完熟したゴーヤです。この赤い部分を剥くとゴーヤの種が出てきます。

まとめ

 種の交換会では比較的自家採取しやすい「栄養繁殖」の種子がほとんどでした。自分は初参加なので今回は種を持参しませんでしたが、次回は少し珍しい野菜の種を持参しようと思います。「自家採取」は野菜を育てる技術向上にもつながります。はじめは難しいと思いますが、経験を積めば上手くできるようになるでしょう。「自家採取」は戦前までごく普通に行われてきました。在来種は同じ品目であって採取した家ごとに、例えば枝豆なら莢に豆が3個入っている家もあれば、豆が2個しか入っていなど個性がでます。もし全滅してしまっても種を分けて貰えたり、保存してあったものがあれば播きなおせます。また、自家採取する事で種をわざわざ買う必要もなく種代を節約する事もできます。一度に5年分を採取してしまえば毎年「自家採取」を行う必要はありません。応用として品種を育成する事もできます。自分も失敗する事もありますが、経験を積んでどのような野菜の種でも自家採取できるようになりたいです。

下の写真はみなさんが持ち寄った種です。しっかりとした瓶詰で冷凍保存すれば20年以上はは保存がきくそうです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!